私的・すてき人

自分の好きな仕事で、たくさんの人に喜んでもらえる。
それが本当に幸せ!

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「有限会社ステラ」代表

いしいたみこ

石井 タミ子さん [大阪府藤井寺市在住]

公式サイト: http://www.rakwell.com/

プロフィール

1961年 山口県出身 
1979年 高校卒業後、就職で大阪へ
2000年 DTPオペレーターを経て、南河内の生活情報誌「らくうぇる。」を発刊 毎月8万5千部発行するフリーペーパーに加え、年一冊ペースでマガジンも発行

時にチャンスは、ピンチのふりをしてやってくる。

主婦にとって離婚は、もう間違いなく人生最大の大ピンチ!
だがそこでヘコんでしまうか、またとないチャンスに変えるかは、ヤル気次第だ。

「離婚してこれからどうしよう……って思った時、この際もう自分で事業を立ち上げようと。っていうか、それしか生きる道はないなっていうのが本音でした。10年後考えたら、今やらないと絶対後悔するって思ったんです。どんなに大変かもわからんと、ただの怖いモン知らずです(笑)」

なんのノウハウもつてもない、あるのは一歩踏み出そうという“覚悟”だけ。
だが、エイ!と踏み出したその一歩は、彼女の人生を大きく変えることになる。
「ツラいこと、泣いたことなんていっぱいあって数え切れない。でも12年たった今、私ほんとに幸せなんです。お金はないけど、自分の好きな仕事やってみんなに喜んでもらえて…」

彼女の決してあきらめない“覚悟”が生んだ地域紙「らくうぇる。」は今、南河内の人々の間に確実に根を下ろしている。

地元の人が元気になれる情報誌を

「新聞やったら、私にも作れるかも……」

そうひらめいたのがすべての始まりだ。

「いくら働いても主婦のパート代じゃ、食べていけるかどうかも不安なほどの収入にしかならなくて。10年先の私と子どもたちの生活を考えたら、今何かを始めなきゃって……」

以前から、学校新聞や雑誌などのレイアウトを手がける「DTPオペレーター」の内職をしていたこともあって、編集の仕事には興味があった。

「それにどうせやるんやったら、人に喜んでもらえることをしたい。地元の人たちが読んで、ちょっと元気になれる――そんな情報誌を作れたらいいなと思ったんです」

ラク~に、楽しく生きましょうで、「らくうぇる。」

だがネーミングとは裏腹に、その船出はなかなかの波乱続き。嵐の中でひとりオールをにぎり、手探りで航路を探すような日々が待っていたのだ。

「月に一度新聞に折り込むフリーペーパーなんですが、はじめは珍しさもあって、みんなが興味持ってくれるんです。ところが2か月目でスコーンと売り上げが落ちて、これはアセリました。やっぱりそんな甘いもんじゃないなって痛感…」

「もうちょっと頑張ってみよう、もう少しやれば軌道に乗るかも……そうやって必死で仕事しても、借金はドンドン増えるばかり。ついに2年目にはスタッフも雇えないとこまできて…これからはすべてを、私ひとりでやるしかない!って覚悟しました」

南河内の良さを、大阪市内にも発信したい

そんななか、さらに追い打ちをかけたのが交通事故の後遺症だった。

「痛くて全然歩けなくなったの。入院して、人工関節を入れる手術を受けて……退院してからはツエをついて営業に回りました。あの頃、精神的にほんとにキツかったなあ」

それでも営業、取材、編集……全てをたったひとりでこなさなければならない。辞めたいって思ったことはない?

「いや、もう辞めるにやめられへんのよ(笑)。辞めたら借金しか残らない。辞めたらすべてが終わる、もう前に進むしかないって。ここはどん底、だからもう上がるしかない!って自分に言い聞かせてました」

だがその頃から、彼女の負けん気と、決してあきらめない気持ちが少しずつ実を結び始める。
「過去の記事よりも、先のイベントをていねいに紹介する。そうすれば冊子を一ヶ月手元において、楽しみに見てもらえる」という一貫した姿勢や、地元ならではのきめ細やかな情報が皆に支持されて、発行日を楽しみにするファンも少しずつ増えていく。
さらに一年に一冊ペースで南河内の魅力を発信してきたマガジンも、日を追うごとに売り切れるほどの人気となった。

「広告を出してくれたお店に『らくうぇるさんのおかげで、お客さん来てくれたよ』っていってもらった時のウレシさはもうたまりません! 12年経って、やっと『らくうぇるさんやったら』って信用してもらえるまでになった……何があっても続けることが大事なんだと、ほんとに思います」

現在は来年5月に出版する、8冊目のマガジンに向けてフル稼働中。

「藤井寺、羽曳野、富田林……南河内には金剛山や温泉にお寺…と自然や名所がいっぱい。歴史の残る町並みもたくさんあって、とっても落ち着く素敵なところなんです。それを、もっともっとわかってほしい!これからは大阪市内、県外の人にも、この南河内のオモシロさを伝えていきたいです」

2012/11/2 取材・文/花井奈穂子 写真提供/ 有限会社ステラ