感動を切り取れる、それが写真の魅力

「迷ったら必ず、こっちの方がオモシロイ!と思える道を選ぶんです!」
その一言が彼女のすべてを現してるかも。
気負うでもなく、楽しみながらオモシロイほうへと“地図のない旅”をつづける。
そしてその旅のなかで押したシャッターには、温度、匂い、風の音・・・見えないはずのものが確かに切り取られている。
「カメラは目が見るよりも多くのものを見る」と20世紀を代表するカメラマン、エドワード・ウエストンはいったが、まさにそのとおり。
彼女の光と影を巧みに操った幻想的な写真のなかには、虚と実のゲームが見える。
世界中を旅した4年間
バックパッカーだったと聞いてちょっとビックリ。
アジア、ヨーロッパ・・・女子大生でありながらあちこちをリュックひとつで回ってしまう、その自由さと軽いフットワーク、そしてたくましさ。
「チケット1枚あればどこだって好きなとこに行ける」気ままな旅のなかで、写真を撮る楽しさを知ったのが大学2年の頃。
「そこにしかない風景、現地の人たちとの交流・・・触れあったたくさんの感動が、写真にならそのまま残せる。即座に切り取ってお持ち帰りできる。これってスゴイなと・・・」
それからは旅に出るたび、一眼レフ片手に何百枚という写真を撮るようになる。
「人を撮るのが好きなんです。言葉?そんなん全然わからなくてもいけるんですよ。異星人やと思てた人と、なんでか心が通じる。で、カメラを向けたら笑ってくれたりとかね」
だが、自由はいつも期限つきだ。やがて旅とカメラに明け暮れた4年間も終わり就職。
OLとして日々を送るが「やっぱり写真がやりたい」の想いは募るばかり。
ここでも「迷ったらオモシロイと思える道へ!」――あっさり会社を辞め、写真の勉強をするためまた日本を飛び出すことになる。
なんとかなるやろ!とロンドンへ
「もう、行ってまえ!というノリです(笑)英語もあんまりわからんけど、なんとかなるやろという勢いだけで・・・」願書を送り、イギリスはロンドンの「アート ユニバーシティ」つまり芸大に入学する。
「日本と違って講義より実践、実践。撮ったものを発表しては意見を出しあう、緊張の毎日。日本の授業しか受けたことの無い私にとって、すごい刺激的でした。それにロンドンは写真がアートとして認識されている町。あの2年間で、型になんかはまらなくていいんだ、自分の感性がすべてなんだってことを教わりました」
日本に戻りフリーになってからは、女性のポートレートも多く手がける。「とにかく相手に喜んでもらえた瞬間は最高。レンズを通して、その人の思わぬ魅力を引き出すことができた時がシンプルにうれしい」
いつかスタジオを構えて「女性の変身願望を叶えられるようなポートレートを撮りたい」が夢。
「そしてもう一度、世界をまわって写真を撮りたいなあ・・・」
とことんオモシロイほうへ、面白い場所へ・・・彼女の押したシャッターは、これからどんな表情を切り取ってゆくのだろう。
2008/09/01 取材・文/花井奈穂子 撮影/小田原大輔