料理はなにより感性、そして表現力

芳醇な香り、そして葡萄の個性、熟成、甘さ・・・あらゆるものがひとつになって、1本のワインは生まれる。ソムリエである彼もまた、いろんなテイストがバランスよくひとつになったワインのよう。料理をうまく引き立てて、しかもピンでもおいしい。シェフ、オーナー、ソムリエ、マネージャー・・・ひとりで何役もこなす彼は、職人というより、まさにプロデューサー。
料理は表現力!
高校生の頃から、休みになると兄の店でバイトしていたという芝野さん。厨房に入りびたって技を磨いたおかげで、知らぬ間に腕はメキメキ。「料理はなにより感性、そして表現力!」という、独創的で器用な人。どうりで、彼のアートのような盛り付けにはファンも多い。
ガチガチのフランス料理界に、ヌーボーの新しい風が吹きだしたのは、ちょうど岸和田に「シャンソニエ」を構える少し前の80年代頃。さっそく「勉強してくる!」とフランスへ、イタリアへと修業に飛んでいってしまう破天荒な兄のかわりに、ひとり店を仕切っていたのが彼。シェフ、企画、もてなしまで、とにかく大奮闘の毎日。そのかいあって、安くて本格的なフランス料理が味わえると、いつかランチ好きのミセスの間で大人気になっていく。
大切なのは人づくり
「倒れるまでワインを飲んだ」というソムリエ修業をしながらも、いつも兄の右腕を務めていた彼が2002年、カフェとパン工房をプラスした「フレール・ド・シャンソニエ」をオープン。ちなみにフレールはフランス語で兄弟という意味。こちらもオープンから大盛況、「じっとしてるのがアカン性分」と笑うだけあって、毎日がフル回転だ。
「今の若いコに足らんのは、カンジンの表現力やね。何がやりたいねん!?て・・・。対話の無いコンピュータ世代の、いちばん悪いとこかも」とちょっと、ボヤき気味。そんなスタッフたちを大事に育てるのは、やっぱりワインと同じ、手間ひまがかかる。
「もっともっと、人づくり、そして心のこもったサービスを目指したい。いつか海外にも、店を出せる日が来ればいいな・・・」
2005/11/17 取材・文/花井奈穂子 撮影/小田原大輔