私的・すてき人

NPOをもっと元気に!

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NPO法人 「SEIN」代表

ゆかわ まゆみ

湯川 まゆみさん [大阪府堺市在住]

公式サイト: http://www.npo-sein.org/index.html

プロフィール

1979年 堺市出身
1997年 帝塚山大学「人間文化学部」卒業  在学中に「ラオス・カンボジアに絵本を贈る活動」を初め、NGOにかかわることに
2004年 NPO法人「SEIN(サイン)」設立 「堺市市民活動コーナー」の運営を受託
2007年 コミュニティカフェ「パンゲア」をオープン

「人と人がつながる瞬間――それを見たくてこの仕事してるのかも!」

なんと、様々なNPO同士をつなげ応援するための「NPO」。へぇ~、そういうアプローチの仕方もあったんだ!という目からウロコの活動を始めて6年。散在するNPO団体の間にパイプをつけて、人と人を結びつけ地域の力にしたいという「SEIN」の思いは少しずつ浸透し、今では堺の市民活動家たちのカナメ的な存在になりつつある。

「イザ!という時だけパッとひとつになれる、そんなゆるやかなネットワークを作りたいんです」 点を順に結んでいくと絵が現れるゲームのように、彼女が人と人を結んだ線からは一体どんなサプライズが飛び出してくるのだろう。

NGOとの出会い

高校時代はソフトボールひとすじ。4番でキャッチャー「あのまま行けば、今頃実業団でソフトに明け暮れてたかも・・・」
だが、あるストレスをきっかけに自分の体がうまく動かない、ボールも思ったように投げられなくなる・・・というスポーツ選手としては致命的な挫折を味わうことになる。
「なんであんな事になったんやろって、人間の心と体のメカニズムが知りたくて大学では心理学を専攻したんです」

だがやがて、そんな自分にも疑問を感じるようになる。「過去のことばっかり考えてても後ろ向きやンって。前向きに新しいことに出会う方が、自分の成長になるん違うかなと思い始めて・・・」
「何をしたらいいんやろ」と考えあぐねていた時、たまたま目に付いたのが海外ボランティアを募るNGO(非政府組織)のパンフレット。今思えば、それこそが彼女にとって大きなターニングポイントとなったのだ。

「参加してみると、スリランカでの2週間は今までにない衝撃!。ボランティアをしに行ってるつもりが、逆にたくさんの感動や経験をさせてもらってた。思い込んでしまったんです、もうこれや、私が求めてたのはこれやったんや!って(笑)」

すっかりNGOにハマった彼女は、3回生ではインドネシアへ木を植えに、そして4回生のゼミでは「ラオスやカンボジアの子どもたちに絵本を贈る」という活動も始めた。
「集めた絵本に翻訳シール作って貼るんですが、その作業がメチャ大変!でも現地でそれを読み聞かせた時の、子どもたちのキラキラした笑顔は忘れられない」

卒業を控えても、頭のなかはNGOでいっぱい。「看護士になったら役に立てるかな、とか世界とどうかかわっていこうか・・・とかそればっかり考えてたんです」

「地域ってオモシロイ」を伝えたい

道を探りながら、とりあえずアルバイトとして働き出した大阪狭山市の「市民活動支援センター」。だがそこで、たくさんの思いや悩みを抱えたNPOのメンバーに出会い、地域という身近な場所で活動していく楽しさや難しさを知ることになる。

「それまで海外しか見えてなかったんです。でもそれちょっと違うかもって・・・地域って本当は面白い、だったら生まれ育った堺の街で、地に足つけて“自分にとってのNGO”をやっていけばいいじゃないかって思い始めたんです」

その後堺市の「市民活動のひろば」でも働いたが、一貫して感じていたのが、「NPOは疲れてる」ということだった。
平成10年に「NPO法」が成立し、まるで雨後の竹の子のように誕生した様々なNPO団体。だが次第に意欲を失い、活動を引き継ぐはずの次の世代も現れぬまま、沈んでいくグループも少なくない。

「お金も無いし、人手も足りない。いくら頑張っても行政は何もしてくれない・・・・そんな不満や悩みが山積してた。だったらもっとNPOが元気になれる、もっと活動しやすくなるそんなサポートをしよう!」と7年前仲間とともに立ち上げたのが「SEIN」だった。

Solution(解決する)Emotion(感情)Information(情報)Network(つながる)の頭文字で「SEIN」。
行政から市役所内にある「市民活動コーナー」の受託を受けながら、堺市と協働でNPO講座や勉強会を開いたり、交流会、そして情報発信ポータルサイト「さかいCOM*COM」の運営・・・とさまざまな活動を開始する。

「どうすれば行政とうまく連携がとれるのか、NPO同士が協力することでどうやって問題を解決していこうとか、7年で皆の意識がすごく変わってきた・・・」
自分たちのサポート活動が、少しずつ根づいてきた手ごたえがある。

さらに自主財源力を上げながら、情報発信基地としての場を造ろうと、カフェ「パンゲア」もオープンした。

「もっと若い人たちに地元にかかわるってオモロイねんで!って伝えたい、引っぱり込みたいんです(笑)人と人をつなぎながら、いろんな地域の課題を解決に向けてコーディネートしていける・・・そんな活動を目指したい。まだまだ未開拓の分野やからこそ面白い、毎日ほんとに楽しんです」

2010/06/28 取材・文/花井奈穂子 写真/ 小田原大輔