私的・すてき人

ブーメランは人生そのもの

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ブーメラン 世界チャンピオン

とがい やすひろ

栂井 靖弘さん [大阪府大阪狭山市在住]

公式サイト: http://www.1101.com/boomerang2/

プロフィール

1971年大阪市出身 
大阪経済大学で数学博士・西山豊氏のゼミに
そこで「ブーメランはなぜ戻る?」を研究、ハマッてしまう
以来ジャパンカップ優勝、世界大会7連続日本代表
7月、旭川での世界大会では「オージーラウンド」競技で世界一に輝いた

夢を追う力――それは一握りの人に与えられた力だ
たまたま出会って恋におちたブーメラン。
だが、オジサンになろうかというトシになっても、その夢をひたすら追い続ける
それってちょっとスゴイ! ちょっとカッコイイ!
そしてこの夏、彼は世界ナンバーワンのトロフィーを手にした。

運命の出会い

運命の出会いは大学3年の春。 なんとゼミに入る試験が“ブーメラン”だったという「なんでやねん」みたいな初顔合わせ。人気ゼミだったため、とにかく「キャッチできたもんから合格」。で、とりあえずキャッチに成功、それからは教授とタッグを組んでブーメランを飛ばし続け、流体力学やらを研究、その魅力にハマッていく。

卒業後も働きながら、もちろんブーメラン、ブーメラン!
まだほとんどいなかった競技者の草分けとして活躍する一方、“ブーメラン伝道師”としてあちこちで講習会を開いたり、TVに出たり。
9年前、地元の狭山に「関西ブーメランネットワーク」というチームも作り、本も出版。
世界大会の日本代表、ジャパンカップ優勝・・・と、仕事のかたわら着々とブーメラン人生を歩いていた。

最高の風を力に

だが、今度の世界大会を前にふと思う。
「もう34歳、ここらが勝負時かも。ならとことんやってみよないか!」
たかがブーメラン、されどブーメラン・・・
けど、だからといって会社まで辞めるかあ・・・とその熱血ぶりにはビックリ。アツイ想いで走り出したら止まらない、「焼きトマトダイエット」にも挑戦して8キロの減量に成功、ジムでのトレーニングに合宿・・・と、とことん体を作り直した。
そしていよいよ迎えた7月8日!
11カ国、100人ものブーメラン野郎が北海道・旭川に結集して大会はスタート。
正確さを競う「アキュラシー」、5回キャッチするまでのタイムを競う「ファーストキャッチ」など6種目の合計点で戦うのだが、当日は運悪く風ビュンビュンの荒れ模様・・・。周りが次々崩れていくなか、「不思議なくらい、最高の風をとらえて」彼は「オージーラウンド」種目で満点を2回も出し、念願の世界一をも見事“キャッチ”した。

すべてをかけた大会で初V!さあ大満足で再就職か、と思いきや「でも総合では13位。やっぱり総合で世界一にならんとなあ」とまたまたヤル気がムクムク。さらに無重力空間で投げる企画もあるとか。
まだまだ“夢の途中”なのである。

2006/07/27 取材・文/花井奈穂子 撮影/小田原大輔