オシャレをキーワードに、南大阪を元気にしたい!
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雑貨店「AJUKAJU」代表
小さくてかわいいお店たちで作るおしゃれな南大阪「Re*Q(リキュー)」代表
まつもと たつひろ
松本 達洋さん [大阪府堺市在住]
公式サイト: http://ajukaju.net/
1977年 大阪市出身
1999年 徳島文理大学卒業後、日本各地を1年間放浪
2007年 ネットショップ「AJUKAJU」をスタート
2010年 堺に実店舗を開店
2012年 「Re*Q」を立ち上げ、フリーペーパー発行やイベントを開催 よみうり堺文化センターで「すぐに始められる雑貨屋さん」講師も務める
泉州という場所を、オシャレなブランドにしよやないか――
“雑貨”という大好きなツールを使って、次々オモシロい企画を仕掛けていく、そのアイデアと行動力!
「スイッチさえ入れば、街も人も劇的に変わる思うんです。こんなにオシャレで素敵なモンがいっぱいあるんやでって、発信していくことで各地から人を呼び込めるやないかなって」
そのために動員数1万人という、大規模な雑貨のフリーフェスティバルを開催するほか、地域の雑貨屋さんの情報を配信するフリーペーパーを発行したり、サイトを作ったり。
様々な仕掛けで、南大阪をまるごと巻き込んでいこうという戦略は着々と進行中だ。
「やりたい事が、連鎖みたいにわいてくるんです。雑貨屋さんはもちろんカフェやテーマパーク、商店街…いろんなとこが力を合わせて、南大阪ってオシャレやなって思ってもらえるような場所にしたい」
自分が楽しいことをトコトンやりたい
ゼロから何かを創りあげる、その過程が大好き。
学生時代もサッカーのサークルを立ち上げ、一からメンバーを集めてチームを作った。
ゼロから新しいものを生み出す作業が、何故か性に合うのだ。
出来上がった組織より、新しいフィールドに立ちたい…大学を卒業し“社会人”になる時がやってきても、やっぱりその思いは捨て切れない。
「就職はしたものの、なんか面白くない。社会に性格を作られていく恐怖みたいなのを感じてしまったんですよね」
で、なんとたった1ヶ月で退社、放浪の旅に出てしまったというから、根っからの自由人だ。
「まさに今でいうフリーター。僕ひとりでどんな事ができるんやろうって、試したい思いもあったんですけどね」
ホテルに住み込みで働いたり、土方や営業…と様々なバイトをしながら1年旅を続けたが、ふとある日気がつく。「結局どこいっても、働かなあかんやん。どこにおっても一緒やなあと(笑)」
そう悟った彼は堺に戻り、家具メーカーでバイトをしながら、今度は小説家を目指す。
「それがまあ、ハシにも棒にもかからなくて(笑)7年ぐらい頑張ったんですけど、これはアカンなあと思った」
そうこうするうちに30歳。彼女との結婚も決まり、自由人もいよいよ年貢の納め時か…と思いきや、やはり「いくつになっても、自分が楽しいことをトコトンやりたい!」というスタンスは変えられない。
「じゃあ、もともと好きだった家具や雑貨を仕事にしよう」と決めるや、すぐさまタイに買い付けに飛んで行ってしまい、周りをあ然とさせたのだとか。
「僕、ジブリの映画『耳をすませば』に出てくるアンティークショップ『地球屋』のおじいさんに憧れてて。あんな店を開きたいなあと思ってたんです」
そしてネットショップで数年、感触を確かめた後に地元、堺に「AJUKAJU(アジュカジュ)」を開店することになる。
雑貨村を作りたい
「日本で一番、手作りの作品が集まる店にしたい!」という思いから、店内には北海道から沖縄の離島まで、全国のハンドメイド作家80~100人の作品がズラリ並ぶ。
「お店に来てくれた方が、ほんとに楽しそうに選んでくださる。そして帰って誰かにそれをプレゼントすれば、もらった人も楽しくなる。ショップを始めてから、次から次へ笑顔をつないでいく仕事ってほんまに素敵やなって気づきました」
一方で、幼い時から育ってきた地元・泉州には「なんかオシャレな風が吹いてへんなあ」といつも思っていた。
だったら雑貨という小さなカワイイを起爆剤にして、オシャレというでっかい旋風を巻き起こすのもオモシロい。
そこで3年前に立ち上げたのが「Re*Q」だ。
堺が生んだ茶人・千利休にかけたものだが、Reはリターン、*は参加ショップ、そしてQは旧という意味でもあるそう。堺にかつてのような活気を取り戻したいという願いがこもっている。
「おしゃれな雑貨屋やカフェが集まって、情報を交換したり、何かを発信していく…そこから南大阪の魅力を知ってもらえれば、僕らが地元を元気にできるんちゃうかなと」
さっそく「賛同してくれるショップ、まずは100軒!」を目標に、自らの足で雑貨屋やカフェを一軒ずつ回り始めた。ゼロから何かを立ち上げるのは、お手のもの。少しずつだが彼のアツい口説きに、賛成してくれるショップが増えていったのだ。
そしてすぐさま、写真も記事も全部自分でこなし、もちろん製作費も持ち出しで、地元のオシャレな店を紹介するフリーペーパーを発行。
数ヶ月の間に、ショップめぐりを楽しむためのウェブサイトも立ち上げるという、そのスピード感も彼ならではのもの。
翌年には「オシャレを発信できるショップが、こんなにたくさんあることを、全国の人に知ってもらおう!」と、堺は鉢ヶ峯の農業公園「ハーベストの丘」で、大フリーマーケットを開催。他にも様々なイベントを企画し、コラボを試みる。
そして進化するアイデアは、もう次の夢に向けて動き出している。
「泉州のどこか田舎に『雑貨村』を作りたいんです!お店はもちろん、そこで体験やイベントができる、そんな場所をつくりたい。TVで人気だった『ダッシュ村』みたいなのができたらいいなあ」
ユニークな仕掛けに火が付き、そして次の仕掛けへと点火していく。それがドンドンおおきくなって、いつか街全体を変える大爆発が起きる日が来るかも。ぜひ関西のあちこちから「南大阪って、なんかおしゃれやん!」といってもらえる…そんな街にしてほしい。
2015/5/10 取材・文/花井奈穂子 写真/ 小田原大輔